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河西邦人

Author:河西邦人
札幌学院大学教授。企業経営から地域経営までをカバーする。北海道公益認定等審議会会長、北海道地域雇用戦略会議メンバー、北海道コミュニティビジネス・ソーシャルビジネス協議会会長、江別市、北広島市、夕張市、石狩市、積丹町、ニセコ町等のまちづくりアドバイザー、各種起業講座や経営講座の講師など公的活動を行っている。北海道NPOバンク理事を通じた社会活動にも従事。著書として、『コミュニティ・ビジネスの豊かな展開』(監修)、『NPOが北海道を変えた。』(分担執筆)、『ソーシャルキャピタルの醸成と地域力の向上』(共著)、『ドラマで学ぶ経営学入門』(単著)がある。

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サービスとおもてなし

1 夏美への高評価
 浅倉夏美の接客は、ガイドブックの調査員の記者から高く評価された。夏美は恋人の加賀美柾樹からのアドバイスのお陰と感謝する。柾樹はこう答えた。「最後の最後に夏美は気づいた。老舗旅館の本当のおもてなしの意味を。ホテルは顧客の要求にできる限り応えようとする。それがホテルのサービスなんだ。その加賀美屋の時間の中で全てが決まってくる。そんなしきたりの中で最高のおもてなしをすること。それが加賀美屋のあるべき姿なんだよ。」
 一方、女将の加賀美環は夏美のライバルの綾華に対して、優雅さ、気配りのある接客、お花の腕前を評価しながらも、「何もしなければ勝てたのに…残念です。」と、綾華たちが女将の環の命令を破って、調査員を特別扱いしたことを理由に負けを宣言した。「待ってください、あのお客様が私のお客様ならちゃんとおもてなしができました。」と綾華は反論するが、「この老舗加賀美屋のおもてなしはサービスと違います。」と、女将の環は一蹴した。

2 サービスとおもてなし
 ドラマの中で柾樹や女将の環の言葉で、ホテルのサービスと加賀美屋のおもてなしの相違を示しています。しかし、柾樹の言葉も抽象的なので分かりにくいものでした。「サービス」と「おもてなし」を渾然と使用しているケースもあり、サービスとおもてなしを明確に区別することに対してそれほど大きな意味はないかもしれません。しかし、ドラマの中では区別されていたので、その差を説明をしましょう。

・サービスとは
語源のsarvant(召使い)から生まれたservice(サービス)は上下関係の下で行なわれる奉仕を意味します。お金を支払っている顧客が望むことをできうる限りかなえていく行為です。

・おもてなしとは
もともとは大切な人を歓待する、心遣いをする、といった行為を意味します。そこには上下関係ではなく、大切な人、重要な人に喜んでもらう、心地よいと感じてもらう、というもてなす側の想いが存在するだけです。

 加賀美屋でのおもてなしは、顧客の望むものをできる限り提供することではなく、加賀美屋の伝統と格式の中で心地よい時間を過ごしてもらうことと私は理解しました。より具体的に言えば、顧客の荷物を持って部屋へ案内する、食事を部屋へ配膳する、お酌をする、布団を敷く、などの行為はサービス。したがって宿泊料金をもらう以上、最低限なすべき行為です。一方、おもてなしはそうした仕事としてのサービスの部分も含みながらも、それに心遣いが加わった行為を指し示しているようです。例えば、柾樹の元恋人の香織が朝早くチェックアウトするのでおにぎりを作って、持たせてあげること。盛岡の地理に詳しくない夫婦の客に手書きのわかりやすい地図をあげること。ジャジャ麺を食べたいという宿泊客に専門店ではなくイーハトーブのような怪しげな喫茶店へ案内すること。

 おもてなしはサービスという仕事以上の行為であり、心遣いを女将が仲居へ求めても、なかなか難しいでしょう。また、サービスはマニュアル化できても、心遣いはマニュアル化しにくいものです。夏美はサービスに関して不十分な能力しか持っていないものの、心遣いを持っている。綾華はサービスに関する十分な能力を持っているものの、心遣いを持っていない。そんな視点で女将は夏美を評価しているのかもしれません。

 しかし、宿泊客が宿泊料金を支払っている以上、サービスの部分がしっかりできていることが優れた旅館としての必要条件です。心遣いはより優れた旅館の十分条件です。それは優れた仲居の条件としても言えます。
 食中毒の危険性があるにもかかわらず、仲居個人がおにぎりを作って、持たせてしまう。友人に対する心遣いとしては良いかもしれませんが、旅館のサービスとしていかがでしょうか?
 もし、夏美のように心遣いができる資質を持った仲居がいたら、まずは仲居として必要なサービスを提供できる能力を鍛えます。そして、自分の取ろうとしている行為が旅館のサービス、心遣いとしてふさわしいか、考える習慣と、問題になりそうなことがあったら上司へ報告、連絡、相談をさせる習慣を身につけさせておくべきでしょう。

テーマ : サービス - ジャンル : ビジネス

「どんど晴れ」第15週のあらすじと経営的視点

1 あらすじ「伝統は変えられません」
 恋人の加賀美柾樹が仕事を辞めて加賀美屋へ戻り、元気に修行する浅倉夏美。成長著しい夏美だが老舗料亭育ちの綾華に立ち振る舞いは劣る。しかし、加賀美環はどんな人の心を捕らえてしまう夏美の不思議な力に恐れていた。
 病床の母のために加賀美屋の女将の座を狙う綾華は、柾樹になぜ加賀美屋で修行をしているのか、その本心を告白する。人の気持ちを捕らえてしまう「天性の才」を持つ夏美に対して、女を落とすことにかけての「天性の才」を持つ柾樹は「綾華が悪いんじゃない。綾華が一番辛いときに側にいてやれなくてごめんな」などと調子の良いことを言い、綾華の気持ちを捕らえた。思わず柾樹の胸に飛び込んだ綾華の姿を見た浩司は愕然とする。
 
 それはさておき、地元の観光協会から、ガイドブックの調査員が身元を隠して評価しに来るので加賀美屋で受け入れてくれと、依頼があった。女将の環は調査員の評価で若女将の決着を付けようと考える。支配人の加賀美伸一と仲居頭の時江は環から駄目出しされたものの、綾華を有利にするために、ガイドブックの調査の件を綾華に教える。
 そんなある日、「川端」という壮年男性が旅館へやって来る。予約を入れているものの、男一人での宿泊とあって、調査員風。伸一と時江は部屋付きの仲居を差し置いて綾華を部屋付きでサービスをさせる。その日に裏口を除いていた怪しい「田辺」と名乗る中年男が予約なしで泊まりたいと言ってくる。その田辺は夏美が担当する部屋へ宿泊することになった。

 田辺は「岩手山が見える部屋へ変えてくれ」とか「ジャジャ麺を作って欲しい」と我が儘を言う。「田辺様、加賀美屋へお泊まりに来たということは、加賀美屋の伝統と格式でお過ごしになるということ。お料理という加賀美屋のおもてなしを受け取って欲しいのです。」と田辺を諭す。そして、さらにジャジャ麺を食べたかったという田辺を仕事中にも関わらず、イーハトーブへ連れ出す。
 田辺がチェックアウトする朝、女将の環が旅館組合関係の旅行中ゆえに、大女将と夏美は見送りをした。その際に、田辺が無理な要望に対する夏美の断り方では気を悪くする客もいるが、老舗の加賀美屋なら客も考えなくてはいけないかもしれない」と言われ、夏美は落ち込む。

2 サービスの基準
 覆面調査員がやって来て、受け入れる旅館側が右往左往する展開では、「私を旅館に連れてって」の第5話が非常に良い出来です。「どんど晴れ」はどんな展開になるのでしょうか。私が定期購読している「日経トレンディ」ではビジネスホテルやシティホテルを中心に、定期的に覆面調査を行なっています。日経トレンディの覆面調査はホテル側に何も知らせず、一般客として宿泊し、ハードとソフトのサービスを評価しています。ただし、「どんど晴れ」のように無理難題をどう対応するか、という調査ではなく、設備の快適さや使いやすさ、客室の清掃具合、名物店の案内、会社からの宿泊客への伝言、忘れ物への対応、普通のビジネスマンが経験しそうな内容に関するチェックです。

 旅館は建物、設備、備品といったハードのサービスと、接客や料理といったソフトのサービスを提供します。ハードのサービスの品質はあるコントロールが可能です。広さや景色など差異が出てしまうハードのサービスは、料金の差異で対応します。一方、人が作り出すサービスは従業員によってばらつきが出てしまう懸念があります。一定水準のサービスを提供するため、旅館はサービスの理念によって従業員の行動基準を示し、一定水準のサービスをマニュアルなどで規定し、研修によってサービスの一定水準のサービスを実現します。
 夏美のサービスを見ていると、よく言えば機転が利く、悪く言えば場当たり的に、夏美が考えているサービスを提供しようとしています。例えば、怪我をしている客を八幡平へ連れ出す、母親に相手をしてもらえない子供を祭りへ連れ出す、客にイーハトーブでジャジャ麺を食べさせる。一見すると顧客満足を追求したおもてなしのように見えますが、加賀美屋としてふさわしいサービスを提供していないリスクがあります。もっとも悪いケースでは祭りに連れ出した子供が、アレルギーの発作を起こし、病院で入院となりました。
 またこれは夏美だけではなく、予約なしの顧客への対応に見られるように、加賀美屋にはサービスのマニュアルがなく、各従業員の個人裁量に任されすぎているように感じます。ドラマ、しかもコメディ的なドラマなので笑って見ていられますが、現実にこのような旅館だったら問題です。サービスの品質にばらつきがあると、他の客と扱いが異なる、以前の宿泊時にはサービスしてくれたのに、といった不満を起こす懸念があります。

 ではどうしたら良いか。これまでの加賀美屋の伝統から培ったおもてなしの精神を理念にし、具体的行動をマニュアル化します。マニュアル化されたサービスをOff JT(職場外職務訓練)とOJT(職場外職務訓練)によって研修し、それが実現できたら部屋付けの仲居として、自己裁量も与えます。
 ただし、自己裁量も制限付きの自由で、理念に基づく行動基準を守る必要があります。顧客の要望はとどまることがないので、これ以上は対応できないといった範囲は決めておくべきです。24室もあって、仲居は時江も含めて8人しかいない加賀美屋で、夏美が一人の客に関わりすぎれば、全体の業務に支障が出てきてしまいます。

テーマ : 企業経営 - ジャンル : ビジネス

加賀美屋のブランド戦略

1 加賀美屋の良さを伝えるために
 旅行代理店に置いておく加賀美屋宣伝パンフレットの見本が加賀美伸一の元へ印刷会社から届きました。その時、支配人の伸一と部下の加賀美柾樹は以下のような会話をしていました。

加賀美伸一「うちのような旅館が生き残っていくためには、ブランド価値を高めるイメージ戦略ってのも大事なんだ。」

加賀美柾樹「だったらあえて装飾を控えるというのも手でしょうね。加賀美屋の魅力は外見よりも、長い間培われてきた伝統にある。それを売りにするんです。特別なものがあるわけではない。しかし目に見えない特別な何かを感じられる。それを伝えるために装飾を省く。その方が伝わるものがあると思います。」

2 ブランドとは?
 ブランドの起源は、自分の牧場の牛と他の牧場の牛とを区別するための焼き印だと言われています。 現代では、ブランドは他社、他社の製品・サービスと識別できる名称、デザイン、シンボルマークなどの総体を意味しています。
 競合他社に比較して消費者によく知られ、良いイメージのあるブランドの会社、製品・サービスは相対的に良く売れたり、高い価格で売れる可能性が高くなります。したがって、企業経営において、ブランド構築が高い優先順位にあります。
 ブランドはPR、広告、製品・サービスの評判や口コミ、消費者自身の利用した感想、などから創られます。ブランド構築にあたって、経営者は会社、製品・サービスが将来こうなって欲しいというビジョンと、実態を考え、ブランドを考えないといけません。将来、高級旅館になりたいというビジョン。そして、加賀美屋が提供する、部屋、施設、調度品、料理、サービス、雰囲気という実態。これら2つの視点からブランドの基本コンセプトが生まれます。
 高級旅館の定義は難しいですが、宿泊単価一人当たり2万円以上、部屋には風呂とトイレが備わり、部屋付きの仲居が宿泊客を接遇し、料理は部屋で食べられる。私は高級旅館というとそんなイメージを持っています。

3 伸一と柾樹の相違
 伸一は長年父であり社長である加賀美久則の片腕として、加賀美屋を支えてきました。その知見から高級旅館としてのブランド構築が可能と考えて、豪華なパンフレットを制作しようとしているのでしょう。
 一方、横浜のシティホテルで勤務していた柾樹は、加賀美屋の部屋、施設、調度品、料理といった目に見えるものからは何かを感じられず、伝統とか雰囲気を評価したのでしょうか。加賀美屋のパンフレットはシンプルな方が良いと提案しています。

 柾樹の提案はパンフレットの表現方法の改善提案をしていますが、その言葉から伸一とは異なるビジョンやブランドイメージを持っているように思えます。パンフレットのようにマーケティングの販売促進のツールの改善提案をするためには加賀美屋が置かれている環境や実態を踏まえて立案された、加賀美屋のビジョン、ブランドのコンセプト、競争戦略が不可欠です。あなたが柾樹の立場であれば、結論に至った背景も説明すべきです。そうしないと提案に説得力を感じられませ。
 一方、伸一の言葉は短いものの、なぜあのようなパンフレットを制作したのか、彼の加賀美屋のビジョンやブランド戦略が理解できました。パンフレット自体は表紙と最初の方しか見ていないので、評価は難しいですが。しかし、伸一は加賀美屋をリゾートホテルにする構想を持っているので、この時期に高級旅館のブランドイメージを定着させる戦略を実施しても、費用の無駄ではないでしょうか?むしろリゾートホテルへ業態転換したときに、0からブランド構築した方が効果的ですし、合理的です。

 細かいことですが、柾樹が上司である伸一にとった態度はいただけません。伸一が自慢げにパンフレットを柾樹に見せているのに、柾樹はさらっと見ただけで、「だったらあえて装飾を控えるというのも手でしょうね。」と伸一の考えたパンフレットを言下に否定し、異なるパンフレットのコンセプトの提案をしています。こうした言い方は親戚とはいえ、上司へ異なる提案をするときの配慮に欠けています。
 まずはパンフレットを褒める。その上で、無駄な装飾を省いてはどうかと提案する。そうすれば伸一が考えているブランドイメージ向上につながる。そんな論理で伸一を説得すべきでしょう。

テーマ : 企業経営 - ジャンル : ビジネス

「どんど晴れ」第14週のあらすじと経営的視点

1 あらすじ
 加賀美柾樹は横浜のホテルを退職し、加賀美屋へ戻ってきた。元大女将の加賀美カツノと恋人の浅倉夏美は喜ぶが、女将の加賀美環は柾樹が夏美と結婚すれば、夏美を追い出す口実がなくなるため、頭を痛める。カツノは姑として環へ、夏美の立場を悪くしないように女将として責任を果たせということと、柾樹を経営者として育ててくれ、と強く言う。環はカツノから嫌みを言われ、そのフラストレーションで、仲居たちへ当たってしまう。
 柾樹は甥の加賀美伸一の下で副支配人としての勤務することになったが、いきなり加賀美屋の帳簿を見せろ言い、伸一は警戒感をいだく。仲居たちは戻ってきた後継者候補の柾樹へ興味津々だ。そんな柾樹に対して、加賀美浩司の恋人である綾華もただならぬ想いをいだいていた。柾樹、綾華、浩司は幼なじみで、綾華は昔、柾樹を好きだったのである。

2 経営的視点「二元統治を避ける」
 組織が成果をあげられない理由の一つに、統治の機能不全があります。組織が目標を達成し続け、維持していくための統制を「経営統治」と言います。経営統治が機能不全を起こす原因の一つが「二元統治」です。組織へ決定的な影響を与えられる権力者が二人いて、それぞれが経営統治することを二元統治と言います。
 二元統治の構造が組織の中にできあがってしまい、それぞれの権力者がそれぞれの思惑で自分の意思を通そうとすれば、部下へ異なる命令をすることが出てきます。そうなると部下はどちらの命令に従えば良いか分からず、混乱し、結果として組織目標の達成を阻害します。

 さて、加賀美屋を見てみると、元大女将のカツノと女将の環がいます。カツノが現役の大女将だった時は、カツノ-環の間は公式な上下関係があり、公式的にカツノが一元統治していました。もちろん、カツノが現役時代にも、女将の環のシンパがいて、二元統治の構造は非公式に存在していたかもしれません。しかし、公式的な構造である一元統治が非公式的構造の二元統治より優越するという組織の原則を環が遵守していたので、問題はありませんでした。
 一方、カツノは環から「大女将は引退したのだから」と暗に加賀美屋の経営の根幹に関与せず、二元統治にならないよう慎重な言動を取って欲しいと言われていました。それにもかかわらず、孫の柾樹とその恋人の夏美がかわいいのか、環夫婦とその孫が気に入らないのか、姑の立場を利用し、加賀美屋の経営にとって非常に重要な加賀美久則の後を継ぐ経営者、環の後を継ぐ女将の決定に関して自分の意思を通そうとごり押ししています。一方、環は夏美を評価しながらも、カツノに反発し、窃盗行為をして女将としてはまったくふさわしくない綾華に肩入れせざるを得ません。
 確かに柾樹は伸一より経営者としての資質が、「天性の才」を持つ夏美は綾華より女将としての資質があるのかもしれません。たとえカツノの評価が正しくても、今のカツノのやり方では二元統治を加賀美屋に定着させ、組織目標の達成を阻害する危険性があります。

 ではどのように現状の問題を解決したら良いのか。まずは話し合いです。加賀美屋の株式を誰がどの程度保有しているかは分かりませんが、同族経営において資本の論理を押し通すと、骨肉の争いに発展し、会社だけでなく家族のバラバラになってしまいます。
 カツノと環はそれぞれ女としての感情が優先され、二人だけの話し合いでは泥沼化します。経営者の久則は二人の葛藤をうまく裁く力量は
なさそうです。外部の第三者を入れて、納得がいくまで話し合いをし、解決を考えると事から始めることが、今の加賀美屋には必要でしょう。それができず、二元統治から深刻な権力抗争を生み、経営陣が対立して没落する同族経営の企業を他山の石としない事です。

テーマ : 企業経営 - ジャンル : ビジネス

「どんど晴れ」第13週のあらすじと経営的視点

1 あらすじ
 女将の加賀美環は長男伸一の嫁である恵美子が女将修行に乗り気でないため、女将修行をさせて欲しいと申し出た綾華にも女将修行をさせることにした。綾華の女将修行に対して元大女将のカツノは反対したいが、既に引退しているので、女将の環の申し出を認めた。自分一人が女将修行をできると思いこんでいた夏美も綾華の女将修行に困惑気味だが、自分のための修行だと思い、頑張ることになった。
 番頭の中本が腰を痛めたので、庭の手入れを夏美がやることにした。夏美に対して厳しい態度だった中本も、庭仕事を代わってもらっているため夏美に好意を持つようになった。一方、老舗料亭で育ち、接客の心得がある綾華は接客の仕事を始める。夏美は蔵の中の食器の整理で板長から役に立たないと言われ、器の勉強を一生懸命にするが、脚立かた落ちて怪我をする。

 怪我をした夏美だけでは大変なので、時江は綾華にも蔵の整理を手伝わせる。綾華は不注意で大女将が好きな織部の小皿を割ってしまう。女将は仲居を集めて、誰が小皿を割ったのか、問いただす。しかし、金を盗んでも女将修行をさせて欲しいと言うくらい悪い女である綾華は正直に言い出せない。浩司から綾華への想いを聞いている夏美は綾華をかばって、「私が割りました」と申し出る。綾華と夏美の不自然な言動を見て、女将は綾華が隠し立てしたと気づいたが、自分が女将修行をさせている綾華の立場を悪くしないように、夏美が割ったことで事を納めた。
 環はその機会を捉えて、夏美を追い出しにかかる。環は夫の久則と長男の伸一と共にカツノのもとへ行き、「夏美のために加賀美屋の和が乱れている」と訴える。それ以上のことを言えない環に代わって伸一がカツノへ言った。「柾樹が戻ってこなければ、夏美さんと加賀美屋は何のゆかりもないことになります。どうして柾樹と夏美にこだわるんですか。自分も大女将の孫です。俺のこと見てくれていますか。なぜ俺を認めてくれないんですか。単刀直入に言います。夏美さんの女将修行を止めさせていただきたい。」

 夏美のために、加賀美屋の雰囲気が悪くなる。夏美を追い出したい環は仲居たちを叱りもせず、放置する。加賀美屋が修羅場になっているのに、いつまでたっても横浜のホテルで楽しく働いていた。加賀美屋の常連客である吉田家の婚礼が柾樹のホテルで行われ、柾樹の発案による結婚式のインターネット中継が採用された。吉田が夏美へ感謝の気持ちを述べている情景を見た柾樹は、「夏美のそばへ行く。盛岡へ戻って加賀美屋を継ぐ。」とその決心を夏美へ伝える。

2 経営のポイント「権力闘争」
 人間が複数集まれば、そこに関係が生まれ、状況によっては権力の行使と需要の関係が生じます。人間には支配欲があるため、権力の関係はしかたがない面があります。加賀美屋のような株式会社には大女将-女将-仲居頭-仲居といピラミッド型の公式の指示・命令系統があります。それとは別に姑のカツノと嫁の環、姑の環と嫁の恵美子、伸一と恵美子といった非公式な権力関係も生まれます。
 権力関係も行使される側、それを受ける側、互いに納得し、共存出来ればよいのですが、その権力関係が権力を巡る争い、すなわち権力闘争になり、人間関係を悪くしたり、企業の目的を阻害することになります。従って、権力闘争が起きないように配慮するのがリーダーである大女将や女将の役割です。さて、第13週では大女将と女将の権力闘争、そして、その代理戦争としての夏美と綾華の争いに注目してみましょう。

 元大女将のカツノは柾樹の母であった俊江を女将にするため、環の女将修行の申し出を認めませんでした。カツノは環は優れた女将であると認めるものの、一つだけ欠けていると考えています。それを環には伝えず、環の次の女将として、俊江の長男である柾樹を経営者へ、その嫁になるであろう夏美を女将へ育てようとしています。そして、環の長男伸一には旅館を継がせるとは考えていません。
 一方。カツノは死んだ俊江より評価されていない女将の環は、カツノへの恨みやカツノに可愛がれている夏美へ嫉妬心もあります。それがカツノに肩入れしてもらっている夏美を盲目的に追い出す、誘因になっているようです。

 加賀美屋はカツノが大女将だった時代に経営を悪化させてしまいました。もちろん、カツノを支えていた環や次男の久則にも責任はありますが、カツノいじょうではありません。そうした自分の経営責任を棚に上げて、環の女将と資質を論じるカツノは自分自身の経営責任をどう感じているのでしょうか。
 そのカツノが環の意向を無視して、次を担う若女将候補として夏美に決めることは、環の権力を抑制し、女将の後継者である若女将へ自分の影響力を温存すると誤解されます。それは、カツノと環の権力闘争だけでなく、環と夏美の関係を悪くします。環がそれに反発し、綾華に女将修行をさせれば、綾華と夏美の間で権力闘争が生じます。さらに柾樹と伸一の間の権力闘争を生じさせます。

 それでは、どう解決すべきなのでしょうか。カツノは不本意であったとしても自分の後継者として環を選んだのであれば、環が女将として手腕を振るいやすい環境を創ってあげるべきです。カツノは引退と共に権力を手放し、旅館の経営に口出しすべきではありません。
 環と久則夫婦、長男の伸一と次男の浩司は既に加賀美屋を支える重要な戦力になっています。したがってかつて女将であった俊江の長男である柾樹を加賀美屋へ戻すことは、彼らを加賀美屋の中核から外すことに繋がりかねません。そうなれば権力闘争が生じますし、旅館経営に関してはよく分からない柾樹へ加賀美屋を任せるリスクもあります。したがってこうした意思決定はカツノは慎重にすべきでしたし、意思決定の際には家族親族会議を行い、環一家と柾樹の役割分担や将来の処遇を議論し、彼らの不安や不満を和らげながら、合意を得るべきです。後の祭りですが。
 もし、どうしてもカツノが柾樹、夏美に加賀美屋を継承させたいのであれば、子会社や事業部を新設し、久則や伸一にはそこを任せるような工夫をすべきでしょう。

テーマ : 企業経営 - ジャンル : ビジネス

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