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河西邦人

Author:河西邦人
札幌学院大学教授。企業経営から地域経営までをカバーする。北海道公益認定等審議会会長、北海道地域雇用戦略会議メンバー、北海道コミュニティビジネス・ソーシャルビジネス協議会会長、江別市、北広島市、夕張市、石狩市、積丹町、ニセコ町等のまちづくりアドバイザー、各種起業講座や経営講座の講師など公的活動を行っている。北海道NPOバンク理事を通じた社会活動にも従事。著書として、『コミュニティ・ビジネスの豊かな展開』(監修)、『NPOが北海道を変えた。』(分担執筆)、『ソーシャルキャピタルの醸成と地域力の向上』(共著)、『ドラマで学ぶ経営学入門』(単著)がある。

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加賀美屋の事業承継①

1 若女将の決定と事業承継
 今週の「どんど晴れ」では浅倉夏美を若女将にする、と女将の加賀美環が決定したことが加賀美屋の経営にとって大きな意味を持ちます。日本の旅館経営において女将はサービス部門のリーダーとしてだけではなく、旅館の顔として経営全体へ影響を与える重要な地位です。
 とは言うものの、旅館の顔である女将と一心同体で旅館の経営にあたる運営会社の代表取締役社長の役割は、旅館の裏方に回って経営することになるかもしれませんが、法律上、きわめて重要です。これまで加賀美屋では、女将の夫が社長に、もしくは社長の妻が女将になるというように社長と女将は私生活だけでなく旅館経営でも重要なパートナーとして、経営を引き継いできたようです。したがって、加賀美屋の次期女将である若女将を夏美に決定することは、加賀美柾樹が次期社長に決定することにつながります。

 このドラマは夏美が若女将になっていく過程を中心に描いていますが、その背景として加賀美屋の事業承継があります。同族経営の老舗旅館の事業承継が「どんど晴れ」の裏テーマと言うべきものです。
 同族会社の事業承継は、承継方法をどうするか、誰を後継者にするか、後継者から外れた人間をどう扱うか、事業承継と事業計画をどう連動させるか、会社の資産の相続と税金対策といったように後継者がスムーズに事業を継承し、経営をしやすい環境を作るかが肝要です。

2 加賀美屋に見る事業承継の難しさ
 同族会社の事業承継を考える場合、親族とその同族会社の状況を把握した上で、進めていかなくてはなりません。
 加賀美屋の大女将、加賀美カツノは大女将という役職だけでなく、家長です。封建的な名家において、家長の尊重はきわめて強いです。また、大女将の主人、すなわち加賀美屋の前社長が亡くなった後、法定相続を前提とすれば、前社長が保有していた株式の1/2は大女将が相続して、加賀美屋の経営権も掌握しています。したがって、大女将のカツノは旅館における大女将、運営会社の所有者、加賀美家の家長という権力者です。加賀美家では誰も大女将に逆らえない雰囲気があっても不思議ではありません。
 大女将の息子、加賀美久則が加賀美屋の運営会社で代表取締役社長を務めていますが、久則は大女将の次男で性格的にもおとなしいため大女将には従順です。また料理人出身と言うことで経営手腕やリーダーシップはいまいちのようです。社長の久則が社長としていまいちなので、大女将が引退した後、女将の環は旅館経営でより大きな力を発揮すべきでしょうが、大女将は姑なのでなかなか大女将と異なった考えで経営していくことは困難です。

 さらに加賀美一家、そして株式会社加賀美屋、旅館の加賀美屋における事業承継を難しくさせているのは、大女将の長男の息子の柾樹、大女将の次男久則の長男の加賀美伸一と次男の浩司の存在。事業後継者の候補が3人います。そして、3人の男の恋人や妻が女将としての資質とやる気があるかどうか。事業を承継する候補者決定の変数が多く、非常にやっかいです。だからこそ、ドラマがおもしろくなるのかもしれません。
 こうした状況で加賀美屋の事業承継をうまくやっていくためには、加賀美屋の企業としての事業計画と事業承継計画が必要です。柾樹と夏美の恋愛、女将修行、女将修行合戦の話がドラマの中心になって、地味な事業承継が十分取り扱われていないのは仕方がないとしても、現実には利害関係者の理解が得られるような事業承継計画を家長であり、会社の所有者である大女将が作り、その計画に基づいて進めていくことが必要になります。
 次回からは具体的な事業承継を説明しましょう。
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テーマ : 企業経営 - ジャンル : ビジネス

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