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河西邦人

Author:河西邦人
札幌学院大学教授。企業経営から地域経営までをカバーする。北海道公益認定等審議会会長、北海道地域雇用戦略会議メンバー、北海道コミュニティビジネス・ソーシャルビジネス協議会会長、江別市、北広島市、夕張市、石狩市、積丹町、ニセコ町等のまちづくりアドバイザー、各種起業講座や経営講座の講師など公的活動を行っている。北海道NPOバンク理事を通じた社会活動にも従事。著書として、『コミュニティ・ビジネスの豊かな展開』(監修)、『NPOが北海道を変えた。』(分担執筆)、『ソーシャルキャピタルの醸成と地域力の向上』(共著)、『ドラマで学ぶ経営学入門』(単著)がある。

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「孤独の賭け」第7話のあらすじと経営的視点

1 「愛する為の裏切り」
 東野会長の秘書である氷室が東野会長から用立て、乾百子へ貸した金を百子は東野会長へ返す。百子は東野会長へ、千種のビジネスパートナーとして自分を認めて欲しいと願う。一方、千種は東野会長の支配から逃れるため、妻の寿都子に彼女の愛人である宮田の紹介で米国のファンドをカジノ事業へ引き込むことに成功した。千種は東野会長が外資導入に反対したら、東野恒産と手を切る覚悟をした。

 百子はコレクションの準備で多忙だが、フェリーネの前のオーナーの妨害で、会場を借りられなくなってしまう。百子の片腕である信子が美香と店の売り上げがなくなった件でトラブルになり、従姉妹の美香は信子が前オーナーとクラブで密会していたことを暴露する。百子は信子に不信感を持つ。百子は千種に会いに行くが、千種は外資導入のためにニューヨークへ飛んでいた。自分には何も知らせず行動している千種との関係に百子は失望し、東野会長から融資を受けてしまう。
 ニューヨークから戻った千種は百子に会うが、貸した金を百子が返済すると言い、驚く。東野会長から逃れて自立しようとする千種と同様に、百子は千種から逃れ、自立しようとしているのである。

2 経営的視点「影響力の排除」
 経営学の視点に、重要な経営資源を依存している相手に対して、弱い立場になる、というものがあります。これは人間関係でも同じであり、理解しやすいと思います。
 千種インターナショナルは、カジノ事業に必要な資金を東野恒産から借り入れているため、東野恒産の意向を無視できません。東野恒産の意向を無視すれば、資金を引き揚げられてしまい、カジノ事業を推進できなくなってしまうからです。この関係を変えようとすれば、東野恒産に依存している経営資源を、他の企業、米国ファンドへの依存に変え、東野恒産と米国ファンドをうまく競わせて、千種インターナショナルが自立的にビジネスをできるようにするのが千種の戦略です。
 そうした経営的視点以外に、子供が親から自立したいと本能的に思うように、千種は東野会長から自立したいと思っているのでしょう。百子が千種に思うことと同様に。
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「孤独の賭け」第6話のあらすじと経営的視点

1 「牙を抜かれた野獣」
 千種から任されたバー「フェリーネ」へ東野会長から高額な絵画が開店祝いとして乾百子へ届けられた。東野会長はその一方で、バーを買収するための資金を出した千種への融資を差し止め、千種に百子との手を切るよう圧力をかける。
 大垣副総裁夫人は千種が東野会長のヤミ献金の資料を持っていることを知っていると伝え、東野会長へ謝罪をするよう迫る。大垣副総裁夫人の意見に従った千種は、東野会長と会食をすることになった。その場には東野の間を取り持った大垣副総裁夫人、大垣副総裁、そして大垣の娘婿である海江田幹事長も同席していた。千種のカジノ事業構想推進に必要な役者がそろった中で、千種は謝罪し、二度と裏切らないことと、百子と手を切ることを約束させられた。
 百子は東野会長へ絵画を返しに行き、千種へ融資して欲しいと頼む。百子は氷室に個人の資金を融資して欲しいと頼み、氷室は金を用立てし、その見返りとして百子の体を求める。その場面を見た千種は百子を避難する。千種と百子は金だけの関係ということがわかり、百子は無情を感じる。

2 経営的視点「経営者の合理性」
 人間は経済学のモデルで想定されているような、経済合理性一辺倒ではありません。だからといって、その場の感情だけで非合理的に行動する人も多くはないでしょう。人間は経済合理性と経済非合理性の間で揺れながら行動すると言えます。人によっては経済合理性が強い人もいれば、経済非合理性の強い人もいる。一人の人でも時と場合によって、経済合理性が強かったり、弱かったりします。

 経営者の場合、どうでしょうか。ステークホルダーへ価値を提供しなくてはならない経営者は、ステークホルダーにとって恩恵をもたらす経済合理性を持つべきとされています。千種の行動はどうでしょうか。
 千種は数百億円の投資をするカジノ事業へ賭けています。ところが、資金の提供者である東野会長から、百子と手を切れと言われ、それを千種はいろいろ理由をつけて、別れようとしません。ドラマの話なので千種と百子の絡みが不可欠だからですが、物語が進展すると、千種と百子の過去の因縁が明らかになります。もし、現実の状況であれば、千種は百子と手を切り、カジノ事業を推進することを選択すべきです。それが経営者として求められる経済合理性に基づく意思決定であるからです。
 
 「経営者の孤独」という言葉があります。経営者は全ての責任とリスクを負って、経済合理性に基づき意思決定しなくてはならないが、その大変さが社員や周囲の人に理解されないことから生じる孤独を意味しています。千種は女性との関係の孤独さを感じる前に、事業のために経済合理性に徹した意思決定をする経営者の孤独を感じるべきでしょう。

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「孤独の賭け」第5話のあらすじと経営的視点

1 「離れれば恋しく…」
 カジノ事業を推進するため、千種梯二郎は東野東野恒産会長と大垣副総裁へ頭を下げ、いっそうの協力を依頼した。東野会長の秘書で、片腕になっている氷室に対して、千種は東野の娘である隆子と氷室との結婚をバックアップすることで、氷室を取り込もうとする。
 カジノ事業で大垣副総裁夫人を始めとするセレブ婦人を招いてパーティーを行っている最中に、大きな地震に襲われる。地震のため、千種がカジノを造る予定地だった湾岸地区が、液状化現象で建設に適切でなくなった。

 一方、乾百子はコレクションの準備とバーの開店の準備に追われる。忙しい中、百子は千種の計画がうまくいくか心配するが、千種から逆に自分のことを心配しろと言われる。そんなとき、若い女性の20名の貸し切りパーティーの予約が入り、百子は喜ぶ。パーティーでは有名シェフに料理をしてもらい、百子は接客も生き生きとこなす。そこにパーティーの主役である東野隆子がやってくる。隆子から千種に使ってほしいと頼まれたと聞き、自分の力で客を取ったと考えていた百子は傷ついた。

 千種は地震から湾岸地区でのカジノ建設が疑問視され、厳しい状況に追い込まれる。千種は東野会長と話し合うことになった。東野会長がカジノ事業から手を引かないよう、千種は東野恒産の裏金の流れを書いた書類を手に入れ、万が一の時は東野と差し違えることまで考えた。東野会長に婿の候補として目をかけられている、部下の高木からたしなめられるが、千種は聞き入れない。
 東野は千種が百子と手を切らないことに不信感を覚えているので、話し合いは一触即発の雰囲気であった。そして東野は土地が安い地方都市にカジノを建設するよう、千種へ言うが、千種は都心部へ執着する。東野は千種が湾岸地区に固執するなら、手を引くことを臭わすと、同席していた大垣副総裁夫人が意外にも千種に賛同する。大垣副総裁はそれが大垣副総裁の意志でもあることを東野へ伝える。いつの間にか大垣副総裁夫人を味方につけていた千種の動きに東野会長は関心すると共に、用心することになった。

 千種と東野会長の会談が決裂せずに終わったことに、部下の高木は喜ぶが、千種は高木の消極的な姿勢をたしなめる。カジノ構想を推進する中で孤独を感じた千種は百子に会いに行くが、千種に側にいて欲しいと願う百子は拒絶する。追い返された千種に対して、千種の秘書の京子が待っていた。

2 経営的視点「カジノの立地」
 顧客に現地まで足を運んでもらう必要がある、小売業、サービス業では、店や施設を構える立地が重要になります。立地がその企業の経営戦略そのものと言えます。例えば、ファストフード業界で、当初、一等地へ出店を展開し、ブランドイメージの確立と客の流れを取り込もうとしたマクドナルド。あえて二等地へ出店し、出来たての美味しいハンバーグと多様な品揃えの提供で、顧客を引っ張ってこようとしたモスバーガー。この2社の出店戦略の相違は興味深いものがあります。
 カジノに関して、アメリカのラスベガスは砂漠に新しい都市を創り、世界最大の歓楽都市にしました。0から創った都市なので、カジノの街らしく、非日常的な空間を提供し、街全体がカジノ客をもてなします。カジノを楽しみたい人は、わざわざラスベガスへ行くことになりますが、ラスベガスはそれだけの価値を提供しているので、不便な場所でも問題はありませんでした。

 さて、日本に関しては、カジノはないので、テーマパークで考えてみましょう。日本でもっとも成功しているのは東京ディズニーランドは、湾岸地区の浦安に立地します。大都市東京からのアクセスは、悪くはありません。一方、埋め立て地など土地は多くありましたので、都心の一等地に比べれば地価は安かったのです。オリエンタルランドは浦安に東京ディズニーランドを創り、首都圏の多くの顧客を集客すると共に、羽田空港や成田空港もあるので、全国、海外からも集客できました。同様に、都市部に立地する戦略を取ったのは、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンで、こちらも集客面で成功しています。
 一方、地方部にも多くのテーマパークが建設されました。テーマパークのコンテンツが違い、また投資金額が小さく、経営主体も異なるため、東京ディズニーランドなどとの立地の比較は意味がないかもしれませんが、ハウステンボスなど地方のテーマーパークの経営は多くが失敗しています。不便な立地を取ると、立地の不利をカバーするために、テーマーパークは提供する価値のいっそうの向上が求められ、投資がかさみ、成功のハードルが高くなりそうです。

 少ない例で一般化するのは危険かもしれませんが、千種が湾岸地区にカジノを創ることにこだわったことは私は理解できます。カジノの近くに多くの潜在顧客がいることは、事業リスクを減らします。政府の政策としては東京一極集中をさらに促すので、あまり望ましいとは言えませんが、ビジネスとしては都市部での立地、もしくは都市近郊での立地は妥当と思います。

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「孤独の賭け」第4話のあらすじと経営的視点

1 あらすじ
 千種梯二郎からお金を借り、乾百子は親と兄の仇を討つため、福島県小名浜にある叔父一家の家と土地を買収した。そして、病床に臥している叔父を責め立て、翌日、叔父は亡くなった。復讐を終えた百子はむなしい気持ちになるが、叔父の娘の美香から恨まれる。
 一方、フェリーネの買収が終了し、百子が経営を行うものの、これまでの負債の支払いに追われ、経営が厳しい。新しいコレクションで新生フェリーネをアピールするため、百子と友人の森信子は準備を始める。
 大垣副総裁夫人から高値で買い取らされた人気のバー、レギャンを千種は百子に任せようとした。フェリーネの再建に取り組んでいた百子は断るが、融資を受けていた弱みもあって、レギャンの雇われ経営者になる。百子の幼なじみで、百子をずっと支援してきた大学講師の蒔田二郎はバーテンダーをして、手伝ってくれることになった。
 千種が百子のためにフェリーネと小名浜の不動産を買収するための融資をし、レギャンを買い取って百子に経営を任せたことに、東野東野恒産会長は千種に対して強い口調で百子と手を切れと警告する。

2 経営的視点「ファッション企業の経営再建」
 デザイナーの百子にとって、フェリーネの経営者になることは夢であり、それを実現したことでフェリーネ再建にやる気を出しています。しかし、ブランドが陳腐化したファッション企業の再建は大変です。こうしたファッション企業の再建はいくつかのポイントがあります。

①デザインの一新
 フェリーネは古くからの顧客はいるものの、デザインは今の時流に合わなくなっていたようです。もっと新しいデザイントレンドを取り入れたい百子とオーナーはぶつかり合っていました。今回、百子がオーナー兼経営者になったことで、デザインの一新を行うことが可能になりました。コレクションでまず、新生フェリーネのイメージを変えようとしています。
 デザインの一新によるブランド革新は避けて通れない道ですが、既存の顧客の離反は招きかねません。例えば、フェリーネに新たなブランドを立ち上げ、フェリーネは既存顧客を満足させる保守的デザイン。新ブランドは革新的なデザインで棲み分けさせる方法もあったかもしれません。百子はフェリーネ自体のデザインを革新する戦略を選びました。
 ブランドイメージの刷新を狙うため、デザイナーの百子を前面に打ち出していくのも良いかもしれません。

②マーケティング戦略の再考
 デザインを一新するのであれば、ターゲット顧客、価格、コミュニケーション方法を変えることも同時にした方が良いです。ターゲット顧客はより若い年齢層の女性とするだけでなく、大手企業に勤め、経済的に恵まれている20代後半のOLといったような具体的イメージを持つ方が、ニーズを反映するだけでなく、効果的なマーケティングを行いやすくします。
 以前のフェリーネは有閑マダムが購入する服という価格だったようですが、より若い人たちへの販売を考えれば、価格帯を下げた方が良いでしょう。コミュニケーションの方法はネット(携帯電話も含む)を使いこなす世代ですから、ブログなどのバズマーケティングを考えても良いでしょう。

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「孤独の賭け」第3話のあらすじと経営的視点

1 「醜聞」
 千種梯二郎は東野恒産の東野会長の資金力によって、ニューセンチュリービルをオープンし、不動産業への進出を果たした。千種は若手財界人としての地位を固め、カジノ構想に弾みをつけるべく、オープニングパーティーに政権与党の大垣副総裁を招待した。大垣副総裁が来るか来ないか、ぎりぎりのところでも東野会長に救われた。
 オープニングパーティーには乾百子も出席したが、千種の愛人と見られ、大垣副総裁夫人たちに蔑まれた。そして、この場で千種を悪く言う雑誌記者ともめ事を起こす。その時はまだ、雑誌記者が将来、火種になることは千種も予想しなかったが。
 政治を巻き込んだカジノプロジェクトを推進するに当たって身辺を綺麗にする必要があるため、千種は東野会長から、乾百子と手を引け、と忠告された。しかし、百子に惹かれる千種は、百子が育ての親である叔父夫婦へ復讐するための3,000万円を貸してしまう。

2 経営的視点「カジノ市場」
 日本ではカジノはギャンブル性が高いため、日本では許可されていない事業です。アメリカのラスベガスを見るように、カジノは経済波及効果が高く、地域活性化策として、政府や東京都を始めとしていくつかの地方自治体で検討されていたこともあります。
 市場規模はパチスロ市場が約30兆円あり、競馬等の公営ギャンブル市場が6兆円。国際的なギャンブルのカジノであれば、海外からも観光客を集客し、より大きな経済効果が期待できます。しかし、パチスロ業界のように利権が複雑に絡み、カジノ自体が合法でないため、千種一人では実現できない事業です。そこで政治の利用です。
 ビジネスは直接、間接に政治と結びつかないとうまくいかないことも多いですが、政治と関わることは、政治資金源にされることにつながり、いろいろと大変です。

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